サガンの失格処分を空撮映像で検証、ツール・ド・フランス(ステージ4)

昨日のツール・ド・フランス(ステージ4)のゴール前スプリントで、カヴェンディッシュが落車負傷し、サガンが失格処分となりました。「ペナルティが重すぎる」という意見も多いようですが、まずは、Le Tour De France(公式)が公開している空撮映像で状況を再確認してみましょう。

 

ゴール前スプリントの空撮映像

オフィシャルが公開している空撮映像はYouTubeで誰でも視聴できます。問題の接触シーンは、街路樹の陰で2人の姿が一瞬見えなくなった直後に起こっています(約7秒付近)。

 

動きが速くて確認しずらい場合は、右下にある「設定」(歯車のアイコン)をクリックし、「速度」の項目を変更すると、スロー再生で動画を視聴できます。

肝心の「肘打ちを食らわしているか?」ですが、動画を見てもよくわかりません。当たっているようにも見えるし、ギリギリ当たっていないようにも見える。

f:id:despacio:20170705160515j:plain
(c)Le Tour De France

 

f:id:despacio:20170705160512j:plain
(c)Le Tour De France

サガンの肘が出ていることは確かなのですが、カヴェンディッシュを弾き飛ばそうとして肘を出したのかは、本人しか知る余地がありません。そこで、それぞれの立場から映像を検証してみました。

 

カヴェンディッシュ目線で見た場合

サガンの右側に並ぼうとしたときは、狭いながらも、まだ少しスペースがあったように見えます(YouTube映像の5秒付近)。そこに飛び込んで行ったところ、サガンが右側に斜行してスペースが狭くなり、さらに肘が飛んできた、という状況です。

本当に肘が当たっているかは確認できません。しかし、仮に当たっていなかったとしても、顔の目の前に飛び出してきた肘を避けようとしてバランスをくずし、落車した可能性は十分にあり得ます。よって、肘が「当たった」or「当たっていない」は大きな問題ではない気がします。

なお、接触の直前に、カヴェンディッシュがサガンの方に体を寄せているようにも見えますが、街路樹の陰に隠れているため映像からは確認できません。

 

サガンの目線で見た場合

続いては、サガンの目線で見た場合。カヴェンディッシュと接触するまでは、グライペルブアニデマールに前方を塞がれ、進路が見つからない状況です(映像の4~5秒くらい)。その後、デマールが左方向に走り始めたため、右側にスペースが生まれ、そのスペースに活路を見出そうとした、という感じにも見えます。

問題は「なぜ肘を出したのか?」。これついては色々な見方ができます。「悪意のある」→「悪意はない」の順に書くと、

  1. 右側に猛スピードでカヴェンディッシュが並んできたため、自分のスペースを確保しようとして
  2. 右側からカヴェンディッシュが体当たりしてきたため、咄嗟にバランスを立て直そうとして(カヴェが体当たりしてきたかは映像から確認できませんが…)
  3. 単に進路を右側に変更しようとして

となるように思われます。

1.の場合は、ある程度、責められても仕方がないかもしれません。でもスプリント中には、しばし見かける光景ともいえます。

2.の場合は、「反射的にやってしまった」ことになります。悪いと言えば、悪いのかもしれません。

3.の場合は、前傾姿勢で「左に傾いた状態」から右方向に進路を変えようとすると、自然と右肘が出てしまうケースもあるような気がします。この場合、それほど悪意があるとは言えません。サガンの左斜め前を走っていたブアニも、「デマールの右側に進路を変えよう」として右肘が少し外に出ています(YouTube映像の7秒付近)。サガンほどではありませんが・・・。

レース後のインタビューによると、サガンはカヴェンディッシュのもとをすぐに訪ねたようで、さほど険悪なムードには見えません(詳細はこちらの記事を参照)。でも、ツールの楽しみが一つ、いやサガンとカヴェの2人分、減ってしまったのは確かです。