富士山の五合目は標高何メートル? そもそも「合目」とは何を指している?

富士山五合目の標高を示す看板

夏は登山のシーズン、ということで富士山登頂を目指している方も沢山いると思います。通常、富士山の登山は五合目から始めるケースが多いようですが、この五合目の標高は何メートルになるのでしょうか?
富士山(3,776メートル)の半分の高さ、つまり標高1,888メートル地点が五合目になると考える人も多いようですが、これは大きな間違いです。

 

五合目の標高は登山口によって違う

実は、富士山の五合目の標高は「どのルートから登山するか」に応じて変化します。まずは、各ルートの五合目の標高から紹介していきましょう。

 ★吉田ルート
  富士スバルライン五合目(標高2,305m

 ★富士宮ルート
  富士宮口五合目(標高2,400m

 ★須走ルート
  須走口五合目(標高1,960m

 ★御殿場ルート
  御殿場口新五合目(標高1,440m

最も高い位置にあるのは富士宮口五合目で、その標高は2,400mです。一方、最も低い位置にあるのは御殿場口新五合目で、その標高は1,440mしかありません。同じ五合目であっても標高はバラバラで、その高低差は最大960mにも及びます。

いずれのルートを選んだ場合も山頂は3,776mになるので、「どのルートから登山するのか?」に応じて登山すべき獲得標高差は大きく変化します。標高差だけを考えれば、富士宮ルートから登山するのが最も難易度が低いといえます。

 

そもそも「合目」とは何を示しているのか? 

上記の例からも分かるように、「合目」は標高を基準に設定されるものではありません。では、何を基準にしているのでしょうか?

山岳用語辞典によると、登山口を一合目山頂を十合目として、その間を10分割した地点が、二合目、三合目、四合目、……になるそうです。10分割するのであれば「山頂は十一合目」になるような気もしますが、このあたりの計算を細かく検証しても意味がありません。

というのも、登山口から山頂までの距離を等分割して「合目」を決めている訳ではないからです。「合目」の語源は諸説あるようで、中には「米を1粒ずつ落としながら登山し、ちょうど米1合がなくなった地点」を合目の基準にしている、という説もあるくらいです。

要するに「合目」は正確な測量に基づく基準点ではなく、大雑把な目安でしかないのです。「歩く距離」を基準にしている訳ではありませんし、「標高」を基準にしている訳でもありません。昔の人(もしくはルートを開拓した人)が感覚的に「このあたりが▲合目になるだろう」と決めたポイント、それが「合目」になっているのです。

五合目というのは、登山口から山頂までの行程の「ちょうど中間地点」にあたる場所と考えられます。でも、厳密な意味での中間地点ではありません。おおよその感覚的な中間地点でしかないのです。状況によっては、売店駐車場を設置するために、五合目の位置を多少前後させている可能性もあります。

同様に、六合目、七合目なども、厳密な意味を持つ基準点ではありません。実際に登山をしていると、「▲合目までがやたらと長い」と感じることがあります。これは自分の感覚がズレているのではなく、実際に距離が長い場合もあります。登山ルートの距離や斜度、難易度などを考慮に入れて、「これくらいの位置だろう」と感覚的に決めたポイントが「合目」です。

富士山を登山するときの豆知識として覚えておくと、少しは役に立つかもしれません。